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「フロム・ヘル」 [本]


フロム・ヘル 上

フロム・ヘル 上

  • 作者: アラン・ムーア
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2009/10/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



フロム・ヘル 下

フロム・ヘル 下

  • 作者: アラン・ムーア
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2009/10/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


内容(「BOOK」データベースより)
いわゆる「切り裂きジャック」の連続殺人事件が本作のモチーフ。ノンフィクション・ノベルに奇想をはめこんだような巧妙なプロットに、作者の本領たるダイナミックな構成力、奥行きのある世界観・人間観が活かされている。丹念に再現されたヴィクトリア朝末期の英国社会に、いくつもの象徴が生み出す複雑な磁場がはりめぐらされる。小説的な読み心地と鮮烈な絵の力を兼ね備え、サスペンスとイリュージョンに満ちた、無類のエンターテインメント。鬼才として知られるコミック原作者によるグラフィック・ノベルの傑作。

「フロム・ヘル」
この題名にピンと来る人もいるだろう。
それは切り裂きジャックマニアか、
ジョニー・デップ主演の映画の題名か。
余り明らかにはされていないが、
映画の原作になっているのがこの本のようだ。

何せ上下巻で5,430円にもなる価格である。
普通なら私だって手を出さない。
ジッと古本で半額になる(それでも3,000円弱だ!)のを待つ。
でも例によってラジオの書評で大絶賛されていたのだ。
あの「文学賞メッタ斬り!」の大森望が、
「今年の翻訳ミステリーナンバーワン」と言い切ったのだ。
そこへ持ってきて切り裂きジャックマニアの私には、
これに手を出さない道理がないのである。
幸いにして貯めていたAmazonギフトカードと楽天ポイントがあったので、
殆ど出費無しで入手したというわけなのだが(笑)。

正直言ってしまうと、
余りにも「Who is Jack The Ripper ?」という本の類を読みすぎていて、
映画版を観たときにも、
「この仮説って誰がたてたんだっけ?
 いや、今までの仮説の集大成みたいなものかな?」
そんな感じに捉えていた。
この本を読んでみて初めて、
スティーブン・ナイトの「切り裂きジャック最終結論」であったことに気付いた。
というよりは、
余りにも長い時間の経過の中で、
各国のリッパロジストたちが多くの仮説を立てていたが故に、
もはや誰がジャックであってもおかしくなく思えるようになり、
その中でもより一層スキャンダラスでセンセーショナルな犯人説、
(というよりはその背景がスキャンダラスでセンセーショナルなのだが)
それを選択して映画化したものだと思い込んでいたのだ。

この本は小説ではない。
基本的にはコミックである。
だが私は今回初めて知ったのだが、
「グラフィック・ノベル」なるジャンルがあるらしい。
それにこの「フロム・ヘル」は含まれる。
だからといってマンガを読むつもりで読み始めるとつらくなる。
何しろ詰め込まれた情報と知識が多すぎる。
ある程度切り裂きジャックに前知識がある私でさえ混乱する。
下巻の巻末に付された補遺を読むだけでも、
60Pもあるのだからそのボリュームたるや、
まさしく切り裂きジャックを扱った書物の中でも突出しているだろう。

実際にあった謎の事件を元に、
いくつかの仮説を組み合わせてフィクションとして仕立て上げた物語は多い。
日本でもそうした小説は散見される。
しかしながら世界一有名とも言える切り裂きジャックを題材として、
「切り裂きジャック最終結論」を元としながら、
更に脚色と推論を組み合わせて構築した本書は文句なく傑作である。
今年のナンバーワンか否かは個人的見解だが、
確かにこれだけの史上稀に見るセンセーショナルな事件を元に、
ここまでの物語を紡ぎ上げた作者は見上げたものである。
英国王室、フリーメーソン、御典医、スコットランドヤード、
それぞれがそれぞれの面子と対面と権威に縛られ、
やがて狂気の物語へと導かれていく様は、
圧巻であり必然でもあり胸くそ悪いが引き込まれていく。
価格なりの価値は充分あるのである。
とにかくリッパロジストとしては、
当時の生活、風習、風俗、宗教、その他諸々、
これだけ網羅されていたらぐうの音も出ないと言うのが本当の所。

「読んでみたいほど買うほどじゃない」という方、
なんならお貸しいたします。
この価格なら買うよりも交通費や宅配便の方が安いし(笑)。
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